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2024.04.30
昨今のAIやCG技術の発展に伴い「バーチャルヒューマン」を活用する企業が増えています。バーチャルヒューマンは、企業の広告モデルとして活用したり、接客やカスタマーサービスとして活用したりなど、幅広い目的で活用できるのが特徴です。
バーチャルヒューマンを活用する企業が増えている一方で「バーチャルヒューマンという言葉自体は聞いたことがあるが、どのような仕組みなのかよく分からない」「ビジネスでどのように活用できるのかを知りたい」といった意見も多く見られます。
そこで本記事では、バーチャルヒューマンの概要や、使われている技術について詳しく解説します。バーチャルヒューマンの活用例や、メリット・デメリットも解説しますので参考にしてください。
目次
バーチャルヒューマン(Virtual Human)とは、人間に近い外観・雰囲気を持っている仮想のキャラクターのことです。バーチャルヒューマンは、CG(コンピュータグラフィックス)によって人間の肌の質感や表情、動き等を正確に再現しています。また、AIが搭載されているため、人間のようなふるまいや会話も可能です。
バーチャルヒューマンが世の中に知れ渡ったきっかけの一つは、2019年の紅白歌合戦です。国民的歌手をCGで再現し、本物と近い外見や動き、歌声を披露したことで大きな注目を集めました。バーチャルヒューマンはこのように実在の人物をCGで再現するものと、架空の人物をゼロから創るものの2種類があります。
デザイナーの創造力次第でどんな外見も描けるため、企業独自のオリジナルキャラクターを作ることも可能です。
バーチャルヒューマンと混同しやすいのが、「VTuber」や「AIアバター」です。
VTuber(バーチャルユーチューバー)とは、YouTubeなどのプラットフォームで活動するキャラクターのことです。VTuberはエンターテイメント目的で利用されるケースが多く、オンライン配信や動画制作などの際に使われています。
AIアバターとは、AI技術によって作られたバーチャルキャラクターのことです。AIアバターには、自然言語処理や音声・画像認識などの技術が使われており、実在する人間と近しい感覚で対話することができます。AIアバターは、チャットボットやバーチャルアシスタントなどのサービスにおいて、自動応答や情報提供を行う際に使われるのが一般的です。
一方、バーチャルヒューマンの場合、広告や教育、受付案内、外国人とのコミュニケーションなど幅広い目的で利用されており、人間らしい自然な会話をできるのが特徴となっています。
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バーチャルヒューマンは、以下の技術によって実現されています。
・3DCG技術
・画像生成AI
・画像認識AI
・音声認識AI
・音声合成AI
・感情分析AI
それぞれの技術について解説します。
3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)技術とは、コンピュータを使って立体的な画像やアニメーションを作成する技術のことです。3DCG技術によって、バーチャルヒューマンの外見や唇の動きや表情、仕草などをリアルに表現できます。
3DCG技術はゲームや映画、アニメ、建築など、様々な業界で使われており、今後のハードウェア・ソフトウェアの発展によってさらに高度な表現ができるようになることが期待されています。
画像生成AIとは、学習したデータから新しい画像を生成する技術のことです。画像生成AIは、主にバーチャルヒューマンの顔や服装、背景環境などを生成する際に使われます。
代表的な画像生成AIとして有名な技術が、GAN(敵対的生成ネットワーク)と、Diffusionモデルです。GANでは、生成ネットワーク・識別ネットワークの2つを競わせることで、リアルな人間と近い顔や髪型、肌の質感などの細かい部分を再現できます。Diffusionモデルも同様にリアルな画像を生成することが可能です。
画像認識AIとは、画像内の物体や顔、表情などを識別・分類するAI技術のことです。画像認識AIを活用すれば、ユーザーの表情やジェスチャー、感情などを読み取って、バーチャルヒューマンがそれに応じたアクションを起こすことができます。画像認識AIの技術は大きく進歩しており、複雑かつ詳細な画像データの解析が行えるようになっています。
音声認識AIとは、音声データをテキストに変換する技術のことです。音声認識AIは、バーチャルヒューマンが自然な会話を行うために必要な技術であり、ユーザーの声・質問をリアルタイムで解析することによって、バーチャルヒューマンが適切に反応する仕組みを作れます。昨今の音声認識AIは自然言語処理(NLP)の進歩に伴い、より複雑な会話内容も理解できるようになっています。
音声合成AIとは、テキストを自然な音声に変換する技術のことです。バーチャルヒューマンが人間と似たような発音・声質で話すために利用されており、自然な対話を実現できます。
音声合成AIでは異なる口調や感情を自由に表現できるため、バーチャルヒューマンの反応をより人間と近い状態にすることが可能です。また、音声合成AIは複数の言語に対応しているため、異なる言語の人と対話する際にも役立てられています。
感情分析AIとは、テキストや音声、表情などから感情を分析する技術のことです。言葉や声の調子、顔の表情などの要素からユーザーの感情状態を推測し、感情に応じて適切な反応を返します。たとえば、ユーザーが喜んでいるときはバーチャルヒューマンは明るい反応を、悲しんでいるときは慰めるような反応をします。
バーチャルヒューマンは、以下の用途で活用されています。
・テレビCMやYouTubeなどの広告モデル
・コールセンターの応対
・バーチャル店員
・教育現場での活用
・医療現場での活用
・施設の見守りサービス・受付案内
・外国人とのコミュニケーション
それぞれの内容について説明します。
バーチャルヒューマンは、リアルの人間のモデルと同じように、テレビCMやYouTubeなどの広告モデルとして活用されています。バーチャルヒューマンは企業イメージに合わせて自由にカスタマイズでき、製品やサービスのプロモーションを行えます。
バーチャルヒューマンは、リアルな人間のモデルとは異なり人件費が掛からないのがメリットです。さらに、スキャンダル等のリスクもないため、安心して起用できるメリットもあります。撮影に掛かるコストも削減できるため、より創造的な広告を制作できるでしょう。
バーチャルヒューマンは、コールセンターの応対も可能です。音声認識AIと音声合成AIを組み合わせて、顧客からの問い合わせに自動で応答します。 バーチャルヒューマンは人間とは異なり、24時間体制で対応できるのが特徴です。そのため、人手不足の解消が期待できます。
バーチャルヒューマンは、オンラインショップや仮想現実(VR)空間内の店舗でバーチャル店員として活用することもできます。バーチャルヒューマンが、商品紹介や購入に関するアドバイスを行う形です。
バーチャルヒューマンを採用することで、ユーザーに新しいショッピング体験を提供できます。オンラインショッピングでは、購入したい商品が自分に合うかを確認しにくいのがデメリットですが、バーチャルヒューマンを活用すれば、ユーザーは仮想空間内で服装を自由に試着でき、購入したい商品の詳細を事前に確認しやすくなります。
自分に合うかどうかを判断しやすくなるため、顧客満足度アップにつながるでしょう。さらに、店舗スタッフの負担軽減につながるメリットもあります。
バーチャルヒューマンは、教育現場での活用も期待されています。企業の講義や教育の担当者にバーチャルヒューマンを採用する形です。
バーチャルヒューマンを教育現場で活用すれば、誰に対しても平等な指導が可能になります。講師によって教育内容にバラつきが出るといったことをなくせるでしょう。また、属人化している知識や技術をバーチャルヒューマンに学習させることも可能なため、質疑応答に対して迅速に回答できるようになります。バーチャルヒューマンを教育現場で活用すれば、講師不足の解消や、講師に支払っていたコスト削減なども可能です。
バーチャルヒューマンは、医療現場でも活用することができます。たとえば、患者の初期診察や健康相談、カウンセリング等をバーチャルヒューマンが行うことで、医師の負担を軽減できます。医療現場に勤めている医師や看護師は、重要な業務に専念したり、緊急事態が起きた際に迅速に対応したりできるでしょう。
バーチャルヒューマンは様々な場所で活用されていますが、近年では病院や高齢者の見守り等を目的にバーチャルヒューマンを導入するケースが増えています。ほかにも、オフィスビルやショッピングモール、ホテルなどの施設案内でバーチャルヒューマンを利用するケースもよく見られます。
バーチャルヒューマンによる見守りサービスや受付案内があることで、ユーザーは24時間いつでも安心して施設を利用できるでしょう。
先述した通り、バーチャルヒューマンに搭載されている音声合成AIは複数の言語に対応しているため、外国人とコミュニケーションを取る際にも活用できます。
たとえば、国際的なビジネス会議や学術会議等でバーチャルヒューマンを同時通訳者として活用し、参加者全員がスムーズに内容を理解できるようにすることが可能です。また、企業のカスタマーサポートで複数言語に対応したバーチャルヒューマンを採用することで、世界中からの異なる言語の問い合わせに対し、迅速に回答できるでしょう。
バーチャルヒューマンを活用することで、言語の壁を超えたコミュニケーションが可能となり、国際交流を促進することができます。
企業がバーチャルヒューマンを活用する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
メリットとしてよく挙げられるのは、以下の3つです。
一つ目が、企業にとって理想的なモデルを自由に作れる点です。
バーチャルヒューマンは、3DCG技術やAIによって作られており、見た目や雰囲気などを自由にカスタマイズすることができます。そのため、企業のブランドイメージに合わせたキャラクターを作成したり、特定のターゲットに合わせたキャラクターを作成したりすることが可能です。
二つ目のメリットは、人件費を削減できる点です。
バーチャルヒューマンは、一度作成すれば24時間365日働き続けることができます。 特にカスタマーサポートの受付や、繁忙期の臨時スタッフなど、人手が必要な場面で採用することで大きなコスト削減が期待できます。バーチャルヒューマンは、半永久的に使い続けることができるため、ランニングコストの節約にもつながるでしょう。
さらにトレーニングや教育にかかる費用も削減できるため、一定レベル以上のサービス品質をキープできる点もメリットです。複数言語に対応できるといったバーチャルヒューマン独自の特徴を活かし、業務品質を向上させることもできるでしょう。
三つ目のメリットが、人間特有の欠勤・体調不良等のリスクがない点です。
バーチャルヒューマンは病気になったり、急用で休暇を取ったりすることはありません。また、賃金をめぐったトラブル等を起こすリスクもありません。そのため、従業員の急な欠勤や長期休暇、体調不良などによる業務の中断や、サービス品質の低下などのリスクを軽減できるでしょう。
また、施設の24時間受付など連続稼働が求められる業務では、バーチャルヒューマンを採用することで安定したサービス提供が期待できます。
バーチャルヒューマンは多くのメリットがあるものの、デメリットや課題もあるのが現状です。特に以下の2点がデメリットといえます。
バーチャルヒューマンを実際に開発する際には、多大な時間・費用が掛かります。
企業に適したバーチャルヒューマンを開発する場合、高度な3DCG技術やアニメーション、AIなどの多岐にわたる専門技術が必要となります。自社で対応できる人材がいない場合、外部の企業へ制作を依頼するのが一般的です。
また、最新技術を駆使してリアルなキャラクターを作り上げるには継続的なアップデートやメンテナンスが必要になります。そのため、開発費用が高額になりやすい点は認識しておきましょう。
バーチャルヒューマンの需要が高まっている現代では、バーチャルヒューマンの開発を請け負っている制作会社が増えています。外部企業に依頼する場合、会社ごとの開発料金や実績等を比較することをおすすめします。
バーチャルヒューマンには、著作権や肖像権などの法的リスクがある点も注意する必要があります。バーチャルヒューマンのデザインや、キャラクター設定は、著作権や肖像権などの知的財産権に触れる可能性が十分にあります。
このようなリスクを回避するためには、法的リスクに詳しい専門家と相談した上で開発を検討する必要があります。
今回は、バーチャルヒューマンの概要や使われている技術、活用例、メリット・デメリットについて解説しました。
バーチャルヒューマンは、広告や教育、受付案内、外国人とのコミュニケーションなど幅広い目的で利用されています。企業にとって理想的なモデルを自由に作ることができ、人間らしい自然な会話も可能です。
バーチャルヒューマンは以下の技術によって実現されています。
・3DCG技術
・画像生成AI
・画像認識AI
・音声認識AI
・音声合成AI
・感情分析AI
バーチャルヒューマンは一度作成すれば、ランニングコストや教育コストなどを削減できるメリットもあるため、ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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